TOPページ> メディカルサービス法人

メディカルサービス法人

はじめに
医療法人においては、営利を目的とすることは出来ません(医療法7条5項参照)。平成19年4月1日からスタートした新しい医療法において、この医療法人の非営利性がより強く規定されています。例としては、持分を有する社団医療法人の設立が出来なくなっています。この持分を廃止したことは、医療の非営利性を追求したものと考えられます。 

そこで営利を追求するために、メディカルサービス法人(MS法人)が設立されています。このメディカルサービス法人(MS法人)は、通常の会社と同様であり、営利を追求することが出来るので、医療法の適用を受けることはありません。 従来は、節税対策の一環として、メディカルサービス法人(MS法人)を設立・利用されていました。今日においては、節税 目的としてはもちろんですが、営利目的の側面も強くなっています。

▼ メディカルサービス法人(MS法人)とは  ▼ メディカルサービス法人(MS法人)の活用事案 
▼ メディカルサービス法人(MS法人)のメリット 
▼ メディカルサービス法人の役員構成と注意点
  ▼ 収益業務・附随業務との関係 
▼ メディカルサービス法人の設立と留意点 ▼ 結びにかえて

メディカルサービス法人(MS法人)とは

メディカルサービス法人とは、医療に関する営利事業を行う法人(会社)の総称です。すなわち、医療法において医療法人が行うことが出来ない営利事業を、医療法人に変わって行う法人(会社)です。特別な法人形態・法律があるわけではありません。通常の株式会社(合同会社含む)と同じです。会社として、医療営利事業を行っていればメディカルサービス法人と言えます。

通常、このMS法人の関係者(役員)には医療法人の理事・社員・病院長などが深く関係していることがほとんどです。メディカルサービス法人(MS法人)が単体で存在・事業を行っているケースは稀であり、医療法人や病院などと関連性を有し、取引などを行っています。一般的には、不動産事業として医療法人・病院に対して病院土地や建物を賃貸したり、病院で使う備品類を販売したり、医療機器のリースを行ったりしています。病院に関する営利的な事業のほぼ全てをカバーしていることが多くあります。なお、医療法人とメディカルサービス法人(MS法人)は別の法人格です。

メディカルサービス法人(MS法人)の活用事案

実際に、MS法人をどのように活用するのか考えられるケースを挙げてみます。MS法人は、通常の営利法人(株式会社・合同会社)なので、行政当局・医療法が及ぶことはありません。遣い方によっては、医療法人を含めた総合医療支援サービスを担う存在となります。

その他、様々な形態でメディカルサービス法人(MS法人)の活用範囲があります。特に資金調達(ファイナンス)を行う場合には、MS法人を介することで、病院・医療法人には出来ない調達方法(社債発行・証券化・新株発行)など通常の会社が行える資金調達を用いることが可能となります。
⇒病院・医療法人の資金調達の具体な方法はコチラ

メディカルサービス法人(MS法人)のメリット

メディカルサービス法人(MS法人)を設立するメリットはいくつかあります。なかでも設立を考えていらっしゃる方にとって大きな利点となるポイントを挙げてみます。

収益業務ができる
医療法人・病院等医療機関の庶務業務全体をカバーできる
節税効果が期待できる
役員について医師資格などが不要
MS法人自体は、行政当局の許認可が不要
その他

メディカルサービス法人の役員構成と注意点

メディカルサービス法人の役員(社長・取締役など)は、医療法人の理事などの関係者が就任していることが殆どです。むしろ、医療法により営利事業が出来ないことから、これを補う形で営利事業を行うことのできる法人を設立することが多くあります。医療法人とメディカルサービス法人間は密接な取引を行っていることがほとんどと言えます。

考えられる役員構成として、@理事長と代表取締役が同一人物、A理事長が取締役を兼務、B理事が代表取締役を兼務、C理事が取締役を兼務の類型が考えられます。特に注意の必要な形態について問題点を挙げます。

【理事長と代表取締役が同一人物である(@)】
医療法人の理事長とメディカルサービス法人の代表取締役(社長)を同一人物が兼任する場合があります。このように医療法人の理事長とメディカルサービス法人(MS法人)の代表取締役が同一人物である場合には、利益相反の可能性があります。医療法人は非営利団体であり、メディカルサービス法人は営利団体です。このように相反する団体のトップを同一人物が兼務することは、医療法の趣旨である非営利性を失わせる可能性があります

具体的な利益相反の可能性として、同一人物が、一方で非営利を考え、他方で営利を追求することになります。現実問題として、同一人物が営利性・非営利性を持った事業の舵取りを公正・客観的に行うことは不可能に近いと言えます。このような事態は好ましくありません。民法の双方代理の規定に抵触する可能性も否定できません。理事長が代表取締役を兼務するのは避けるのが賢明です。

【それ以外の形態(A・B・C)】
医療法人の代表者でない者(理事)が、営利法人の代表取締役となっても利益相反の可能性はありません。理事長が代表権を有しない取締役に就任しても利益相反の可能性は低いと言えます。

上記の考え方は、従来の通達解釈においては、問題無いと考えられていましたが、現在の通達解釈においては、問題が生じる可能性があります。早急な見直し等が必要です。詳細は、下記の注意事項を参照

ただし、医療法人とメディカルサービス法人の取引実態を実質的に考察して、適正な取引価格を超える場合・利益分配とみられる可能性があれば、医療法違反となる危険性もあります。すなわち、メディカルサービス法人を利用した医療法の趣旨を逸脱するような行為には注意が必要です。

「医療法人運営管理指導要綱」・「医療機関の開設者の確認及び非営利性の確認について」の要綱・通知があり、行政当局としては、医療法人の理事とメディカルサービス法人の取締役の兼任を認めない行政指導を行う場合もあります。メディカルサービス法人の設立に際しては、役員構成なども注意する必要があります。

収益業務・附随業務との関係

特定医療法人(特別医療法人)においては、収益業務を行うことができます。それ以外の医療法人においては、収益業務を行うことが出来ません。 業務の一部として又はこれに附随して行われるものは収益業務には含まれません(附随業務)。医療法において具体的な範囲が列挙されていないので、個別的に判断することになります。「附随」する事が原則なので、本来の業務に附随的に生じることが原則と言えます。

厚生労働省からの通知では、

病院等の施設内で当該病院等に入院若しくは通院する患者及びその家族を対象として行われる業務又は病院等の職員の福利厚生のために行われる業務であって、医療提供又は療養の向上の一環として行われるもの。
病院等の施設外で当該病院に通院する患者を対象として行われる業務であって、当該病院等において提供される医療又は療養に連続して行われるもの

この2点について規定されています。
上記以外は、医療法人が附随業務として行うことが出来ません。すなわち、メディカルサービス法人が行える営利事業と言えます。身近な例では、コンタクトレンズにおいては医療用具であり、これを販売することは営利事業とみなされます。

メディカルサービス法人の設立と留意点

医療法人と異なり、メディカルサービス法人は通常の会社です。会社法が定める会社の設立提供手続きに沿って行うことになります。都道府県知事・厚生労働省の許認可は必要ありません。留意点としては、医療関連の事業を行う場合には、行政機関に対して、許認可申請を行う必要があります。

通常の会社と同様なので、株主総会・取締役会の開催・議事録の作成などを行う必要があります。特に医療法人・病院と取引を行う場合には、客観性を担保するために契約書の作成などに注意する必要があります。あまりに不相当での取引(取引価格が高すぎるなど)の場合は、医療法の趣旨を逸脱するとして行政の指導が行われる可能性があります。節税を全面に押し出すのは好ましくありません。

⇒会社設立についてはコチラ
⇒合同会社(LLC)設立についてはコチラ

結びにかえて

通常、メディカルサービス法人は何らかの医業に関係する事業を行っています。これらの事業には、許認可を得る必要のある事業が多く存在します。また、会社として会社法の規定(株主総会・取締役会の開催など)を遵守する必要があります。
当事務所は、ビジネス法務を得意としており、医療法にも精通しています。許認可を含めた総合的な医療法務サービスを提供できる事務所です。設立から業務執行までを一貫したリーガルサービスを行います。

上へ