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相続の承認及び放棄

相続による財産・権利義務の承継は、相続人の意思に関係なく生ずるのが原則です。 ただし、この原則を貫くと不都合が生じる場合があります。

すなわち、相続財産よりも借金等の負債の方が多い状況では、相続したことにより結果として予期せぬ借金を抱えることになります。

そこで、法は、相続人の意思を尊重して、相続の効果を選択できる自由を与えています。

▼ 単純承認・限定承認・相続放棄 ▼ 相続の承認又は放棄する期間 ▼ 承認及び放棄の撤回等 
▼ みなし規定 ▼ 最後に

単純承認・限定承認・相続放棄

1.単純承認・・・相続人が被相続人の権利義務を無限に相続する。財産も借金 も全てを相続する。通常の意味において、相続といえばこの状態。

2.限定承認・・・相続財産の範囲内でのみ借金などの債務も相続する。財産よ り借金が多い場合において、相続した財産の範囲内で借金も相続すること。借金を背負うことは無くなる。※相続人が複数存在する場合には、全員でのみ行うこ とができる。数人の内で、1人だけ限定承認することはできない。

3.相続放棄・・・相続財産の一切を受け取らない意思表示。財産も借金も全てを放棄する。これにより初めから相続人ではなかったと扱われます。 放棄するには、家庭裁判所に申述する必要あり。

相続の承認又は放棄する期間

いつまでも自由に選択できるとなれば、他の相続人に迷惑を掛けたり、不安定な状況が続くことになります。 そこで法は、承認又は放棄できる期間を定め早期の安定を考慮しています。

915条「自己のために相続の開始があったことをしった時から3ヶ月以内」 とされています。 「あったことをしった時」とは、死亡の事実を知った時に加えて、具体的に自分が相続人となったことを知った時とされています(判例)。

なお、承認・放棄の意思表示は、相続開始後にするべきであり、開始前におこなっても無効(判例)。 すなわち、被相続人が亡くなる前に承認・放棄の意思表示をしても無効ということです。

承認及び放棄の撤回等

一度行った意思表示を自由に撤回できるとなれば、法的な安定性を欠き、他の相 続人に迷惑を掛ける結果となります。原則は、撤回はできません。 他方で、全く撤回できないとすれば、意思表示を行った本人の利益を害する結果となる場合もある。 そこで法は、一定の理由があれば取り消しを認めています。

<具体的には>
1.制限能力による場合・・・未成年であった、成年被後見人が意思表示した場合には撤回できます。
2.詐欺・強迫による場合・・・意思表示が自由な決定によるもの以外の場合には撤回できます。
3.親族の規定による場合・・・後見監督人の同意がない場合には撤回できます。

※撤回できる場合には、6ヶ月を過ぎると時効により撤回できなくなります。

みなし規定

一定期間は、相続人に選択の自由が与えられています。この間にいずれの意思表示もしなかった場合にいずれの効果も発生しないとするのは妥当ではありません。

かかる場合には、一定の意思表示があったと扱うことになっています。 すなわち、単純承認をしたものとみなされます。 具体的な要件は3つ規定されています(921条参照)。

最後に

選択の期間が過ぎると、単純承認したとみなされ、借金が多い場合なども無限に相続したことになります。相続開始した場合には、資産調査を早急に行い、何れの意思表示をするのが最良なのか判断することが必要です。

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